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* 概要

 有り体に言えば昔懐かしいチェックポイント方式のアクションゲームである。とにかく頻回に死亡するため、一般にこのゲームは非常に難しいと言われているが、死亡の原因はそのほとんどが「知らないから」であり、知ってさえいればまず死ぬ事はない。つまり清々しいまでの覚えゲーということで、とにかく覚えさえすればいずれは死ななくなり、誰でもクリアする事ができる。「マゾゲー」とか「心が折れる」と言われつつ、ハードなゲームファンのみならず幅広い層から多数のファンを獲得した背景には、「一見難しそうに見えて、根気よくやれば誰でもクリアできる」という「学習を裏切らない」ルールの存在が大きかったと考えられる。

 大きな特徴は「オンラインモードである事を意識させない、繋がりの緩いオンラインプレイ」である。このゲームは物理的に回線が切断されていない限り、特に断りなくオンラインモードで動作する。しかしオンラインモードだからといって、明示的にセッションを作ったり参加したりしなければゲームをスタートできないという事はなく、基本的には1人で普通にゲームをプレイする。攻略すべきゾーンに入ってから、地面に設置された「ソウルサイン」と呼ばれるオブジェクトを拾う事で、シームレスに味方PC・青ファントムを追加し、複数人でエリアを攻略していくという流れになる(あるいはそのまま1人でプレイしても構わない)。エリアの攻略が終われば青ファントムは自動的に消滅するため、その関係に継続性はない。in game chatも意図的に実装されておらず、言語による意思疎通は一切できない。このように、このゲームのオンラインプレイは非常に刹那的で継続性のないものになっており、古くはEQから始まったような「重い」オンラインプレイングの対極を行くような仕様になっている。

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* 世界観

 同社の過去の作品であるKing's Field~Shadow Towerの路線を引き継ぐプロジェクトということで、相変わらずリアル志向で非常に暗い世界観で構成されている。「崖の端に見えない壁がある」という事はなく、「落ちたら死にそう」と思える場所は全て実際に落ちる事が可能で、落ちればちゃんと即死する。NPCはいわゆる「善人」がおらず、全員どこか頭のおかしい連中で構成されている。Mobに限らずあらゆるNPCは攻撃・殺害する事ができ、死んだNPCは二度と復活しない。キャラクターデザインは完全に洋ゲーのそれであり、萌えなど欠片も見られない。マップは普通の城のような場所もあるが、汚物と虫ばかりで構成されたマップや、人の顔をした巨大なムカデが這い回っているマップなど、はっきり言ってロクでもない場所が多い。

 暗い世界観は単なる好みの問題でもあるが、継続的な関係性のないオンラインプレイや、対人戦を抜きに語れないこのゲームの構造において、「何かにつけてノーマナーとか言い出す頭が気の毒な客層をふるい落として最初から呼び込まない」という効果も発揮されたと考えられる。「殺伐とした世界観が殺伐とした行為の肯定を後押しした」という事である。

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* PK(試合形式でない殺人)が可能だが、PK側が徹底的に不利

 青ファントムはホストがソウルサインを拾うことで能動的にセッションに招かれるが、これとは別に既存のセッションに敵対キャラクタとして無許可で参加(「侵入」と呼称)する事ができ、これを黒ファントムと呼称している。近年のネットワークゲームでは珍しい「合意のない殺人」が可能という事である。しかし、詳細は後述するが、システム的に黒ファントム側は徹底的に不利な状態として設定されており、普通にやっていればホスト側が負ける事はほとんどない。
 黒ファントムは常に非常に困難な状況の中で勝つ事が求められる。よって相応に上手いプレイヤでない限り、黒ファントムは戦闘が始まると一瞬にして死んでしまい、PKとして機能しない。また黒ファントムのプレイヤは「延々と負け続け、たまに勝つ」という流れになるため、負ける事への耐性が低い人間には務まらない。勝つ事だけを目的にするならば、黒ファントムをやる事に全く意味はなく、そういう人間は出待ちなどの計画的なPKKに流れる。「PKよりもPKKの方がどうしようもない人間が多い」というのはUltima Online時代からの伝統であるが、このゲームにもそっくりそのまま同じ言葉が当てはまる。

 黒ファントムを不利にするルールは、おおよそ以下のように構成されている。

・ホスト側がホスト+青ファントム2の合計3名で活動できるのに対し、黒ファントム側は常に1人しかいない。早い話が毎回3:1でレイプされる。
・黒ファントムが侵入する際には前兆があり、さらに黒ファントムが侵入した瞬間に「した」とはっきりメッセージが表示されるため、ホスト側は30~60秒かけて入念な準備ができる。対して黒ファントムはその間ずっとローディング画面を眺めている状態のため、全く何も準備できない。
・黒ファントムは自身より高レベルなキャラクタのセッションにしか侵入できない。黒ファントムがキャラクタ性能でホストを上回るという事はまず無い。
・黒ファントムのスタート地点は常に一定(ホストとほぼ同じ)であるため、黒ファントムは毎回ホストを後方から追跡する形になり、ホストは前進する事を止めさえすれば、いつでも完全な形で待ち伏せを行う事ができる。この仕様があるために、「黒ファントムはMobから攻撃されない」という黒ファントム唯一の優位点も、実際には優位点として機能しない。
・ホスト側が出待ちした場合、マップ途中ではなくSpawn地点直上で待ち伏せる事さえ可能である。この場合Spawnした瞬間にレイプされて即死する。
・ほとんど全てのマップが1本道のため、黒ファントム側が取れる戦略に幅がない。黒ファントムは毎回同じルートで移動し、同じ場所から出現するため、待ち伏せできるホスト側が常に圧倒的に有利である。
・ホストの勝利条件が「黒ファントムを殺害する」または「エリアをクリアする」の2つあるのに対し、黒ファントムの勝利条件は「ホストを殺害する」しかないため、黒ファントム側が取れる戦略に幅がなく、ホストが有利な場所で待ち伏せに入った場合、(黒ファントム側があえてさらに不利な条件で戦うというサービスをしてやらない限り)完全な膠着状態になる。
・黒ファントムはファントムであるためHPがホストの50%しかない。「しがみつく者の指輪」を使うと75%まで不利が減少するが、貴重な指輪枠が1つ占有される。ホストは指輪なしで100%のHPを持っているため、同じ指輪枠を使って他のもっと強力な指輪を装備できる。
・レイプを避けるために最も有効な手段としてステルスがあるが、キャラクタをステルス仕様にすると指輪枠がさらに1つ減少し、他に何も付けられなくなる。加えてステルス状態ではエフェクトの付く「一度きりの復活」やHP Degenのつく「呪いの武器」、HP Regenのつく装備などが一切使用できず、戦力が大幅にダウンする。

 「ホストは1人で戦っても既に黒ファントムより有利だが、さらにそこに2名追加して3:1でレイプできる」と言えば、その不利の凄まじさが理解できよう。黒ファントムはPKというより、どちらかと言えば「ホストを接待して楽しませるためのボランティア」のような存在であり、一般に「PK」という言葉から連想されるような強者ではない。だが「だからこそやる」「むしろ燃える」というようなプレイヤがいる事も事実であり、黒ファントムはそういったゲーマーの受け皿になっている。一方でPKを仕掛けられる側にとっては「基本的に勝てる」という事実は安心感があり、これもゲーム全体の難度と同様「一見ハードな仕様のように見えて実は大した事ない」という仕様の一環として、幅広いファンを掴む上で一定の役割を果たしたのではないかと考えられる。

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* PvEアクションゲームとして

 アクションRPGではあるが、「成長要素は全て救済措置」と言う事も不可能ではない程度にはアクションゲームである。その証拠に、一切のレベルアップ・武器強化・スキル取得なしにクリアする事も可能である(時間はかかるが…)。
 マップのボリュームが少ない。覚えゲーであるため、覚えていない間は攻略にかなり時間がかかるが、いったん覚えるとかなりのスピードでクリアする事が可能となる。それはそれで面白いので一概に短所とも言えないが、その場合マップ数の少なさはやはりネックとなる。
 1周目は「知らないので死ぬ」というゲームだが、2周目からはMobの攻撃力が上がって「知っていても死ぬ」状態になり、リプレイアビリティは高い。ランダムに黒ファントムが侵入してくる事はリプレイアビリティをさらに向上させる。続編発売直前の今になってもなお未だに結構な数のプレイヤが残っている事は、その証拠の一つと言える。
 
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* PvPアクションゲームとして

 基本的にリーチの先端を当てていくゲームだが、前転で抜けつつ反撃するという選択肢があり、ここが駆け引きの軸になっている。他にも、ローリングを読んでのディレイ攻撃、スタブからの起き攻め、リーチは短いが出の早い崩し攻撃など、一通りツールが揃っており、PvE前提の無茶苦茶な技も少ない事から、見た目以上に対人対戦ツールとして機能する。
 どうしようもない事だが、ラグの影響がかなり大きい。このゲームのラグは「モーションが終わる前に相手の攻撃がヒットする」「最新の位置が表示されない」という形で発現するため、ラグが酷い相手からの攻撃は限度を越えると回避不能になり、またこちらの攻撃は全く当たらなくなる。特に問題が大きいのは「スレスタ」と呼ばれるラグを利用したスタブで、攻撃側のラグが大きいと、普通に歩いて後方に回り込んでいるだけであるにも関わらず、防御側の画面ではまだ相手が正面にいるように表示される(古い位置が表示され続ける)ため、結果的に「描画上は命中しているこちらの攻撃がなぜか外れ、同時に突然正面からスタブを食らう」という現象が起きる。こうなると戦闘は、目の前の敵というよりも、見えないラグとの戦いになり、非常に対処が難しい。対応方法としてはブラックリストぐらいしかないが、このゲームにブラックリスト機能は存在しない。
 ラグがそれほど酷くなくても、魔法をはじめとした投射攻撃は常に狂った軌道が表示されるため、視覚に頼らずに感覚で避ける必要がある。
 武器ごとの特徴が弱く、使える物と使えない物がはっきり別れており、選択に多様性がない。本気でPvPをやろうとすると皆大体同じ装備になる。
 ポールウェポンなど一部の武器の両手R1連打は、バグを使わなければ最初の一撃が入った時点で即死の可能性があり、非常にバランスが悪い。
 「炎の嵐」は命中後吹き飛ぶ技だが、起き上がりに重ねると吹き飛びが発生せず、連続でヒットして即死する。使用すると完全にバランスが崩壊する。
 「酸の雲」があり得ないほど強い。適当に出しても当たるし、起き上がりに重ねると確定で入るため、入れるにも苦労しない。即死するわけではないので、狂い度合いは炎の嵐に比べればまだマシなレベルだが、研ぎ石がない状態で全ての武器が削れるとほぼ詰みの状態になるなど、極めてバランスが悪い事に変わりはない。
 打刀などの一部の崩し技は、別の攻撃を挟んで再び崩し技にループできるため、無限段または半無限段になる。
 ベストタイミングでスタブを重ね続けると二度と起き上がれずに死亡する。
 HP全開アイテムが少ない隙で使い放題であるため、自主的に草を封印しないとダラダラと長引いてまともな対戦にならない事が多い(高レベルになればなるほど顕著)。
 あまりにも落下の危険が大きすぎるマップ、狭くてまともに動けないマップなどが多く、実際に対人戦が行えるマップは2~3程度しかない。
 一部の武器強化アイテムの出現率が非常に低く、対人用キャラクタを完成させる際に長時間の単純作業を余儀なくされる。
 パラメータの振り直しが非常に困難、または場合によっては出来ない。

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* 改善点

 いくら黒ファントムを不利にすると言っても、ホスト側が自重しない限り常に3:1というのはあんまりなので、2:1や2:2の状況を作る。実際バグでたまにそういう状態になる事があり、概ね好評である。
 回復アイテムが高性能過ぎて、無制限では常に泥仕合になるため、何らかの制限が必要。
 一部の即死系の技は使った瞬間クソゲーになるため、PvEはともかくPvPでは調整が必要。
 黒ファントムはホストのスタート地点ではなくその逆の位置(例えばボスのゲート前)からのスタートの方が良い。それで初めて「戦力的には不利だが状況を使って勝つ」という基本的なビジョンが明確になる。PKK集団の出待ちも防げる。
 ホスト側・黒ファントム側いずれの戦略にも多様性を持たせるため、進行ルートを2つ以上作成する。FPSのマップメイクでは基本。
 黒ファントム側に「ホストを殺す」以外の勝利条件を設定してもよい、かもしれない。


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  2011-09-04 11:19:32 (Last Modify)
  2011-09-03 16:55:42 (First Edition)

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